阿佐ヶ谷での仕事
2019年から計画をしていた阿佐ヶ谷で中庭を囲むアパートメントとオーナー住戸の現場がこの4月でようやく竣工を迎えます。
基本計画や調整で約3年が経ち、2022年6月から新築アパートメントの工事、2023年~中庭の造園作業と外構工事が始まりました。
長く時間が掛かった現場でしたが、終わりが近くなるとたくさんのことが思い出されます。
相談当初は15年近く長年誰も住んでいない古い建物があり
中庭の灯篭も東日本大震災の時に倒れたままで何となく時が止まったような感じがしていました。
(解体工事が始まるまでは、人の代わりにタヌキが住んでいて夕方になるとそっと中庭に出てきたりと、可愛い姿を垣間見れたりはしていたのですが、、今も元気にしてるかな?)
敷地も1000㎡以上あり、以前はオープンハウスをはじめとした不動産業者が分譲の建売住宅の企画を持って買いに来たそうです。
お金の問題ではないというオーナーさんや地主さんのお考えもこの計画の根底にありました。
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そうした色々な状況を模索しながらオーナーさんと乗り越えてきたこと。
難しい状況を逆に利点として緑豊かなコモンスペースを考え、地域の環境やつながりと維持継続ができる計画にしたこと。
そのことが関係者全員の合意を得る事につながったこと。
大きな理由でした。
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そして工事が始まると、各職方の技術の高い仕事があらためて見れたこと。
こうした人たちがいてくれるからこそ、僕も仕事をさせていただけていることができているのだと思います。
小さいながらも水辺を楽しめるよう趣のあるつくばいや石畳。
この東京の植生に合う緑や木々。
オーナーさんともたくさんの意見を交換し、色々とお世話にもなりました。
最近よく取り上げられるようになった敬愛する牧野富太郎の言葉に
「人の一生で、自然に親しむということほど有益なことはありません。
人間はもともと自然の一員なのですから、自然にとけこんでこそ
はじめて生きる喜びを感ずることができるのだと思います。」『牧野富太郎植物記』より
という一節があります。
共生感や循環への理解・自然環境のこと、現実的な建築や不動産のこと、
ここにはそういった様々な要素が偶然に重なりながら一つの意志のように出来上がっているようにも感じました。
そしてこの緑ある環境を長期的に維持継続できるように考え、次世代が引き継いだあともこのコモンスペースが、より有益な場所となるように「VISION」を考え、関係者間で共有しています。
阿佐ヶ谷という緑豊かなこの街がもっと良くなりますように。
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その日は神明宮さんに工事のお礼に行き、4月29日の春祭で能楽堂でお囃子や巫女舞の奉納でたくさんの人が並んでいたのですが、斎藤宮司にも久しぶりにお会いする事ができ、先日の阿佐谷姉妹さんのテレビで拝見したことをお伝えするとニコニコと穏やかな笑顔で答えてくれました。
カキツバタのひとつかと思います。
境内にある睡蓮鉢がとてもきれいでした。